ハイヒールプロジェクト日記

#001 義足を作る! 2011年5月



田澤製作所にて、新しい義足を作るための型取りの様子。こうやってメス型の石膏ギプスモデルを作ります。
私は左足が大腿(ふとももまで)、右足が下腿(ヒザ下まで)の義足を使うので、型取りの方法も左右それぞれ違います。
25年間石膏の型取りをしているので、ギプスを抜くのが得意です。この特技は、作品制作で自身の型取りをする時に生かされてます。

こうやって作った石膏ギプスモデルに溶いた石膏を流し、オス型を作ります。
そのオス型を元に、ソケット(義足をはくとき、足をつっこむところ)が出来ます。
興味がある人は画像検索してみてね★



#002 『high-style』 2011年7月


ハイヒールを履くための部品『high-style』が届きました!
画像は作品『hello! my new legs.』より。



部品を片手にハイヒールを買いに行きました。

私の人生には関係の無い場所だと思っていたハイヒール売り場は、想像以上に広く、刺激的でした。
こうやって部品をハイヒールに突っ込んで、地面と水平がとれているか確認します。




#003 カタヤマがハイヒールで立った!! 2011年7月





生まれて初めてハイヒールを履いて歩いたよ!
手すりづたいの頼りない第一歩目。怖かったのは最初だけでした。
ほんの十数センチ目線が高くなっただけなのに、この視線の変化はどこまででも歩いていけるような自信を与えてくれました。

両足義足の場合、パイプの長さを変えれば簡単に身長を伸ばすことが出来ます。
でも、ハイヒールによって得る事の出来た目線は、それとは違いました。ハイヒールの持つパワーを感じました。


ちゃんと最後は平行棒無しでも歩けるようになったよ!



#004 amputee cabaret 切断女の夜 2011年7月



 ハイヒール作りと並行して準備を進めてきた、
 『amputee cabaret 切断女の夜』。

 ゲストに義肢装具士の臼井二美男氏、
 ホステスに折茂昌美さん、GIMICOさん、須川まきこさん、
 ボーイさん2人を迎え、義足だらけの一夜となりました。
 ちなみに四肢一本無いごとに入場料1000円オフのディスカウント!
 &「義足だけ」はおさわりOKでした(笑)
 もちろんふざけてなんかいませんよ。
 前半は臼井さんの義足講座&ホステスによる義足あるある女子トーク、
 後半はライブパフォーマンスの二部構成。

 主催の私もちゃっかりホステスとして参加し、
 ハイヒールでステージに立ちました!

 当日の詳しいレポートや出演者紹介などは、切断女の夜WEB へ!






photography by tsurara and kousaka yuiko.



#005 Changing to high profile foot. 2012年4月




自分のことは自分でできるように!ということで、足部の交換を教わってきました。

Katayama Mari's Changing to high profile foot



こちらは歩行練習の様子です。

Katayama Mari's Walking Lesson







#006 シンデレラの靴を探せ! 2012年4月


歩行練習も終えハイヒールを履く感覚も心構えもバッチリな時、新たな問題が起きました。
それは『ハイヒール用の足部(部品)に合う靴が無い』ということ。
逆シンデレラのごとく、『ハイヒールを履いた足の形』になっているこの足部品。
やっと合った靴が見つかっても半日履いているだけで靴が義足に負けてしまいヘタヘタになってしまうのです。
最初のうちはウキウキるんるんハイヒールショッピングに出かけていましたが、
履けない靴がゴロゴロと部屋に散乱するようになれば気分も下降気味に。

ということで、一体どういう靴なら義足に合うのか基礎から知ろうと、靴専門の理学療法士さんを尋ねたり、
靴の専門学校へ学校見学に行ったりと、2011年後半はリサーチ作業に走り回りました。

分かったのは、市販されている殆どのハイヒールと義足部品のウィズ(足の横幅)は合わないということと、
生身の足にとって"やわらかく履き心地の良い靴"は義足にとっては不安定で、部品に負けやすい、ということ。
よって、『普通の足』では履けないようなハイヒールが、この義足のシンデレラだと、アドバイスを戴きました。






 そして再び駆け込む田澤製作所!
 デザイン会議を経て、 こんなに素敵なハイヒールが出来ちゃいました!
 画像は仮靴(仕上がりの前段階)ですが、
 ヒール部分のピンクは、足を切断する前に使用していた補装具と同じ色なのです。
 ベルトも、補装具みたいで可愛いでしょ。







2012年4月28日、アートアワードトーキョー丸の内2012会場にて、
足部交換の実演と共に、このハイヒールをお披露目することが出来ました。
あとはもう、このハイヒールを履いて、夜の街に繰り出すだけです!

[追記] 信じられない事に、グランプリを受賞しました!
今までの制作、そして活動を支えてくださった方々、応援してくださった方々、本当にありがとうございました。





#007 補装具とハイヒールについて、思う事。 2012年5月

 どうしてここまで、補装具とハイヒールにこだわるかと言いますと、
 私は両足とも脛骨欠損という、つまり太い骨の無い病気をもって生まれてきまして、
 両足を切断する前はその足を支えるために、つま先から足の付け根までをガッチリ固めた補装具を使用して歩いていました。
 1日装置して帰ってくると、擦れや圧迫で出来たミミズ腫れが破れ、血だらけになっていて、
 慣れないハイヒールで靴ずれを起こして痛そうに歩いてる人を見ると、その姿が幼少期と重なるのです。。。

 今見ると、総革張りの補装具は内反足に沿ってコロンとしていて、とっても可愛いけれど、
 当時は朝が来て、玄関に置かれたそれは、まるで拷問具のように思えました。

 昔は、足の裏が正面から見えるほど湾曲した足も、そんな補装具を着けた足も嫌いで、
 だから写真はすごく苦手でした。なのに今はセルフポートレートを撮っているという不思議。
 いや、克服したからセルフポートレートを撮れるようになったわけではありません。
 セルフポートレートを撮る事によって、少しずつ、自分を確かめられるようになりました。
 そうして、昔は別の世界にいた"ハイヒールを履く人たち"に共感を覚えられるようにまでなったのだと思います。

 もちろん、このハイヒールプロジェクトはそんな痛々しい気持ちや思い出を重ねて行っているわけではありません。
 それにハイヒールも、義足も、私の専売特許でも個性でもなんでもありません。
 ハイヒールってすごく象徴的で色んな要素満載のツワモノだけど
 私の1番最初のきっかけはステージで歌うのに必要なため(そしてヤジを飛ばしてきた客にギャフンと言わせたかった)という単純なもの。
そして、ずっと閉ざしていた『憧れ』の世界へ素直に目を向けることをゆるせたのです。
きっかけなんて、どうでも、なんでも良いんです。素晴らしい志でも、どーしよーもないことでも、きっと何かに繋がるはず。
私のハイヒールは、そこへ連れて行ってくれました。




#008 まだまだ続くよハイヒールプロジェクト!




部品も揃った、ハイヒールも出来た、ステージにも立てた。
『自分の為の』ハイヒールプロジェクトは終わりました。
でも、これで終われません!
活動していく中で知ってしまった事、もっと伝えたい事が増えてしまったのです。
いつの間にか、その為に私はハイヒールを履いて、ステージに立っていました。
そして今、ステージに立つ為に作ったハイヒールが、私にとってのステージになっていることに気付きました。
ハイヒールが目的ではなく手段になっていたのです。

これからも、片山真理は熱い志を胸に、いつでもどこでもオンステージしちゃいます!
ハイヒールプロジェクトで世界中!歩き続けますので応援よろしくお願い致します!

これまで歩いたハイヒールプロジェクト※随時更新
【スタート】田澤製作所、amputee cabaret 切断女の夜@ネイキッドロフト、義肢装具士学会ファッションショー、 アートアワードトーキョー丸の内2012@丸の内行幸地下ギャラリー、デパートメントH@キネマ?楽部、自由について2@トラウマリス、Emagazine, KISS THE HEART#2@伊勢丹新宿店、Sports of Heart@代々木体育館、あいちトリエンナーレ2013、こわれ者の祭典@ロフトプラスワン、島田角栄監督映画『死殺カオス猿の帝国』in 大阪、 C7C in 名古屋、L’Experience japonaise@フランス国立劇場La Criee, 第十二回日本フットケア学会年次学術集会 in 奈良、Handi Fashion ファッションショー in Aix-en-Provence, 津田塾大学、第七回アジアビューティーエキスポ@パシフィコ横浜、東京芸術大学、渋谷スクランブル交差点、表参道ヒルズ、『バリバラ』収録@NHK大阪、ホワイトハンズ『生と性のバリアフリーフォーラム』